息子を持つ母の、はかない夢
結婚してすぐに、長男を妊娠した。
初ベビー&初孫ということで、
私の実家もダンナの実家も、
とても心待ちにしていた。
やや難産ではあったが、
産んでしまえば、
その痛みも消えるぐらいのかわいさ。
目が大きく、よく笑う子だったので、
外出先では、おばさまたちはじめ、
通りすがりの女子高生からも
「かわいい」と声をかけられる。
「ベビーモデルに出したら?」
というお言葉もよくいただいた。
長男は、ママべったりで、
いつでも甘えてくる。
当時は、
「聞き分けの良い、
イケメン息子を
将来、連れて歩けるのかしら?
そうなったら、母親としては、
この上ない喜びだわ~」
と、ひそかな期待を膨らましていた。
高校までは、確かに
いい感じだった。
やんちゃな部分はあるが、それはそれで、
もて要素になっていた。
それが、どうしたことだ。
体型はどんどんまあるくなっていく。
大学院生の現在、彼はすっかり
ひげを生やした
おっさんだ。
本人曰く
長男: 「マラドーナみたいだろ?」
母: (おいっ!開き直ってんじゃねぇヨ!
あの頃のかわいい息子を返せ~~!!)
ポク
ポク
ポク
チーン!
教訓:祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらはす
奢れる人も久からず
ただ春の夜の夢のごとし
猛き者も遂にはほろびぬ
偏ひとへに風の前の塵におなじ
『平家物語』第一巻「祇園精舎」より